Intelligence Report: SNSのAI分析からみる米中間選挙

Sakana AIは、金融と並ぶ注力領域として「防衛・インテリジェンス」に取り組んでいます。AIが人間には読み切れない量のデータから仮説をつくり、分析者がその仮説を根拠とともに使える状態を目指しています。 今年3月には読売新聞社と共同で、SNS上の110万件の投稿から中国による対日批判のナラティブを分析しました。 この分析では、AIが立てた仮説を記者の取材によって裏付けています。 SNSは一見、世論を映す鏡のように思えますが、投稿の数を数えるだけでは見落とすことが多くあります。たとえば選挙前に支持が厚く見えた候補が、実は党内の動員に支えられていただけだったり、急に増えた反応のほとんどが実は批判だったりします。本当の情勢をつかむには、数十万件の言葉を「誰が・なぜ書いたのか」まで遡って読む必要があります。 AIを使えば、こうした投稿の内容にまで踏み込んだSNS分析が可能になります。今回はそのケーススタディとして、11月3日に投票が行われる米国中間選挙を分析しました。 ▶ レポート全文(PDF): 米中間選挙のAI分析 — テキサス州上院選 SNSからのナラティブ分析 Sakana AIのナラティブ分析システムは、言説を「誰が・何をして・それがどう評価されるか」という物語の単位で取り出し、その物語を自分の言葉で語り直した人の数で広がりを測ります。抽出した物語は複数のAIモデルが原文と照合し、確かめられたものだけをレポートに残しました。今回の約71万件の反応についても、支持・批判の比率を統計的な誤差幅つきで推定しています。 仮説の深層分析 SNSの中だけを見ていると、言説空間のゆがみに気づけないことがあります。そこで長時間の推論で深いリサーチを行う当社のプロダクト「 Sakana Marlin 」に世論調査、選挙資金、予測市場、報道などの公開情報を調べさせ、X上の観測と突き合わせました。Marlinは複数のAIが仮説を並行して探り、互いに評価し合う仕組みを持っています。Marlinを駆使することで、SNSの内と外のどちらで先に変化が起こったかを、出典つきで辿ることが可能になりました。 テキサス州上院選で分かったこと 約30年にわたって共和党が勝ち続けてきたテキサス州で、今回の上院選は接戦が予想されています。上記のようなAIを駆使して、両候補と両党の州組織によるXへの発信2,042件と、それに寄せられた反応70万5,976件を分析したところ、たとえば次のようなことが分かりました。 共和党の決選投票前にパクストン候補へ寄せられていた「支持」の多くは、党内の指名争いに向けた動員でした。決選が終わると、支持の割合は約5割から2割弱に下がりました。 両候補のリプライ欄で交わされていたのは、二つの陣営が互いに相手の欄へ出向いて攻撃し合う応酬でした。こうした反応の中身と推移を読み